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「レプリカって、一体何なのかな……?」
最初その小さな呟きは、独り言かと思っていた。けれど弱々しい眼差しが僕に向けられていることに、ようやく話しかけられていたのだと気付いた。
「なあイオン。俺は……レプリカは、やっぱり存在しない方が良かったのかな」
「……ルーク」
続く言葉は出てこなかった。何を訊ねられているのか、分からないわけではない。
彼はレプリカの――自分の存在意義を知りたいだけだ。
だけど、それは僕にも分からなかった。まだ誰にも話していないけれど僕も彼と同じ、レプリカだから。それも、代わりがたくさんいる。被験者の代用品のひとつにしか過ぎない存在――それが僕だ。
レプリカとはそういうものだと、ずっと思っていた。だから僕は導師らしく、その勤めを果たそうと今まで必死に頑張ってきたつもりだった。だけど。
「……ごめんな、イオン。変なこと言っちまった」
「いえ。僕こそすみません。力になれなくて……」
ルーク。あなたを見ていると、改めて考えさせられるんです。レプリカにも――僕にも、自我があってもいいのではないかと。僕らにも誰かの代わりではない、別の生き方だって出来るのではないかと――。
ねえルーク。僕も知りたいんです。僕が僕として、あなたがあなたとして、生きていてもいいのかどうか。
あなたなら、いつかその答えを示してくれるかもしれない。そう思えてならないんです。
(by sakae)
END
(08-04-07初出)
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