落ち葉踏み

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 黄色や赤に染まった木立の中青年が一歩前に踏み出すと、地面からはじゃりっと乾いた音が上がった。この美しい光景には似つかわしくない不協和音。
 足元には鮮やかな色の葉と、すっかり枯れて色あせてしまった葉が混じり合うように落ちていて、どうやら枯れ葉の方を踏みつけてしまったらしい。
 よくよく注意してみると、周囲の木々はもう随分と葉を散らせてしまっていた。冬が近い。冷たい風がすぐ近くの木から赤い葉をさらっていくのを、目で追いかける。葉っぱがたどり着いた先は、紅葉にも見劣りしないほどに鮮やかな。それは青年にとって、決して色あせたりしない完璧な存在で。
「……遅い」
 この俺を待たせるんじゃねぇよと言うのを聞いて、青年は苦笑する。
「ごめん」
 青年が歩くたびに、辺りに乾いた音が響く。枯れ葉が崩れて、鮮やかな紅葉だけが綺麗なまま残っていた。
 同じ落ち葉でもこんなに違うなんて、まるで自分達のようだ。もし、あいつがこの綺麗な紅葉なら、俺はやっぱり枯れ葉なんだろうな。
 そんなことを考えながら、青年は紅に歩み寄る。いつかは自分も、彼にとって色あせない存在になりたいと密かに願いながら。
 風が吹く。青年より一足先に、色あせた葉が紅の元へたどり着いた。
(by sakae)


END
(07-11-01初出)

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