夜をもう一度

※無断転載・AI学習を固く禁じます。
 腕の中の温もりに気付いて目が覚めた。いや、正確には目が覚めたから温もりを感じたんだろうけど、そんなのどっちでもいい。つーか、すげー眩しい!
 窓ガラスを貫通してくる太陽の光に辟易して、俺は起きたばかりなのにもう一度きつく目を閉じてしまった。眩しすぎるから仕方ねえよな。そもそも、何でカーテンが全開なんだ?
 確か……ああそうだ。ぼんやりしていた記憶が段々鮮明になってくる。昨日は月がすごく綺麗で、眺めながら寝たんだった。
 大きくてまるい月を思い起こしていると、腕の中の温もり――アッシュが、もぞもぞと身じろいだ。きっと彼も眩しいんだろう。
 ……たりーけど、そろそろ起きねーとな。観念して目を開く。だけど意外にも、アッシュの方はまだ目を覚ましていなかった。
「なあ、起きねーの?」
 熟睡しているところを起こすのは何か悪い気がするけど、起こさなかったら多分、いや絶対あとで怒られるって思ったから声を掛けた。それでもアッシュは、全然起きる気配がない。
 困ったな。――でも。
 いつも怒ってばかりで喧嘩別れしてしまう彼が朝まで隣にいるなんて、滅多にないことだ。それも、こんなふうに穏やかに。
「――ま、いっか」
 手を伸ばしてカーテンさえ閉めてしまえば、太陽の眩しさはそんなに気にならなくなった。そしてもう一度夜をやり直すようにアッシュを抱きしめ直すと、俺はまた目を瞑った。
(by sakae)


END
(07-10-20初出)
タイトルが行方不明になったので改題。

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