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「アッシュ」
もう届くことはないと分かっていて、それでも呼んでみる。まだ青い色の空を漂うあの雲のような白い空間に、ただ一人、取り残されてしまった彼の名を。
さっき俺の中に流れ込んできた何かは、きっとアッシュそのものだった。
あたたかかった。泣きたくなるくらいに、優しい温もりだった――けれど。
取り残されてしまったあいつの肉体は熱を失って、段々冷たくなっていく。――今この瞬間も、どんどん冷たくなっている筈だ。
それが嫌で、悲しくて、すぐにでもあいつにこの温もりを返してやりたかった。
「アッシュ……」
だけど伸ばした手は届かない。俺にはもう、あいつに触れることすら出来やしないのだ。
せめて抱きしめてやりたかった。温もりを分けてやりたかった。
(by sakae)
END
(08-03-07初出)
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