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空はこんなに青いのに。見上げた青にミルクは吐息を漏らした。感動から出てきたそれは、次第に憂うつな溜息に変わっていく。
あの方はこの青空を見ることすら出来ないなんて。脳裏に過ぎった彼の人を思い出すたびに、いつも黒い空がついてまわる。
彼にもこの綺麗な青を見せてあげたい。そんな夢を胸に抱きつつ、ミルクは空から目を離した。
彼と再会したのはそれからすぐのことだった。いつもどおり暗雲を引き連れてやってきた彼は、やはり空と同じように暗い顔をしている。せめて青空の下でなら、彼ももう少し明るい表情をしてくれるのではないか。そんなふうに考えるだけで、ミルクの口からは思わず溜息が出そうになってしまう。
それに気付いたのはそんな時だった。あっ、とつい漏れ出た声に彼は眉をひそめる。そしてミルクが指で示したそれを見ると、目を丸くした。
暗い空の下、それでも鮮やかに映える深緑。本来見せたかった青とは別のあおが、そこにあった。見るものによっては何の変哲もないただの木でしかないだろうが、きっと彼にも自分と同じように見えている筈だと、その横顔を見てミルクは確信する。
共に見上げた緑が目に眩しかった。
(by sakae)
END
(21-05-04初出)
「あなたに書いてほしい物語」さんからお題をお借りしました。
「空はこんなに青いのに」で始まり、「緑が目に眩しかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば2ツイート(280字)以内でお願いします。
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