変わるもの、変わらないもの

※無断転載・AI学習を固く禁じます。
 ルークは変わった。それは近くで見てきた私が、よく知っている。ちゃんと彼の覚悟を見てきたもの。……だけど。
「ルーク、お金はちゃんと払ったの?」
 道具屋から出てきたルークを見た途端に、口をついて出てきたのはそんな言葉。正直まだ不安があった。
 思いきり眉をひそめたルークが息をつく。
「……あのなあティア」
「ご主人様はきちんとお金を払っていたですの! ミュウがしっかり見ていましたの!」
 私の質問にかわいらしい声で答えたのはミュウ。ルークの肩の上で得意げに自分の胸を叩く姿は、とても愛くるしい。
 ああ、かわいいだけじゃなくてお利口さんだなんて、偉いわ……!
 思わず抱きしめようと手を伸ばしてしまったけれど、それは叶わなかった。怒ったルークが、ミュウを遠くに放り投げてしまったから。
 青い小さな体はすぐに見えなくなってしまった。……かわいそう。
「うぜーっての! ブタザル!」
「ルーク! 投げるだなんてひどいわっ!」
 そう叱りつけると、ルークはしゅんと肩を落とした。
「……わりぃ、やり過ぎちまった」
 素直に謝る彼に、私は強く確信する。やっぱり変わったのね。
 思わず頬を綻ばせていると、何故かルークは拗ねたような表情になって再び口を開いた。
「けどさティア。……俺だって、もう買い物ぐらい普通に出来るからな」
「え? あ……ご、ごめんなさいっ! つい」
 確かにそうよね。彼と出会い、そして彼が変わると決意を示してから、もう随分経ったもの。私は慌てて謝罪を口にする。失礼なことを言ってしまったわ。でも……。
 出会って間もない頃と比べれば、しっかりしてきているのは間違いない。間違いないんだけれど……。
「おーい!」
 少し離れた場所から、聞き慣れた声が飛んでくる。振り向くと、私達に向かって手を振るガイの姿があった。彼はそのまま大きな声で続ける。
「ルークー! 買い物はちゃんと出来たかー? 金払ったかー?」
「……あいつもかよ」
 がっくりとうなだれるルークの姿は、さすがに哀れだった。彼だけでなく、私やガイも変わるべきなのかもしれない。そんなふうに思う。
 だけど今はミュウを探し出すのが先決ね。小さな仲間を探す為に、私は辺りを見渡した。
(by sakae)


END
(07-10-14初出)

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