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「何だ、もういたんですか」
扉を開けたと同時に目に飛び込んできたのは深い紅。声を掛けたというのに見向きもせずに鏡を見つめたままの瞳は、その身にまとった巫女装束や髪よりもさらに鮮やかだ。
視線どころか言葉すら寄越さない女に苛立って乱暴に椅子を引く。静かな部屋に響いた音は、椅子を引きずった張本人ですら眉をひそめるほどに不快なものだった。
「あなたは、もう少し静かにできないのですか」
するとようやく真っ赤な瞳が向けられる。冷たい目だ。そうだというのに苛立ちとは違った熱が込み上げてくるのを、リコリスは燃えるような色のせいにした。
(by sakae)
END
(21-2-20初出)
「 140文字で書くお題ったー 」さんからお題をお借りしました。(貴方はリコザクで『アンビバレンス』をお題にして140文字SSを書いてください)
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